研究概要 |
統合失調症患者の神経心理学的検査(Conceptual Reasoning Task)を施行時における,健常者との賦活パターンの違いに関する研究をfunctional MRIを用いて行った。被験者は健常者28名(男性14名,女性14名),患者15名である。健常者では,両側の補足前運動野(BA8),前部帯状回(BA32),運動前野(BA6),頭頂葉(BA7,39),後頭葉(BA18,19),および左側の前頭前野(BA9,10,44,45,46),側頭葉(BA37)に賦活がみられた。また,両側の基底核,視床,中脳,橋,小脳にも賦活が認められた。女性は男性に比べて少ない賦活領域で課題を処理できること(正答率には差がない)が判明した。特に運動前野においてその差が顕著であった。したがって本研究では,患者群と健常対照群における性をマッチさせた。研究の結果,患者では課題の正答率が健常者に比べて低い傾向がみられた。また,賦活領域のパターンは両群において似ていたが,賦活領域は減少しており,特にワーキングメモリーに関与する左側の前頭前野における賦活領域の減少が顕著であった。さらに,頭頂葉と側頭葉後部(文字や言語情報の処理に関連)においても減少していた。患者群を非定型抗精神病薬服薬群(10名)と定型抗精神病薬服薬群(5名)の二群に分けて検討したところ,前者では前頭前野と頭頂葉における賦活が見られたのに対して,後者においては検出感度を下げても賦活がみられなかった。さらに,非定型抗精神病薬服薬群をリスペリドン服薬群(5名)とオランザピン服薬群(5名)の二群に分けて検討したところ,前者では課題正解率がコントロール群と同等であり,患者群全体と似た領域に賦活がみられたのに対して,後者では検出感度を下げても賦活がみられなかった。
|