「非アルツハイマー型変性痴呆の病態機序に関する研究-細胞骨格異常の観点から-」の4年間にわたる研究において、レビー小体型痴呆(DLB)の臨床病理学的および細胞病理学的研究に焦点が当てられた。DLBの剖検例を用いた細胞病理学的研究としては、α-シヌクレインによる免疫組織化学により、細胞内のレビー小体の形成機序は軸索末端、細胞体、樹状突起という順に進み、レビー小体の形成は細胞死後も含めて6段階に分けられることを示した。また、レビー小体は、軸索輸送障害とともにニューロフィラメントと微小管という異なる細胞骨格にα-シヌクレインが蓄積して形成されることを示した。レビー小体の変性機序については、α-シヌクレインを含む免疫組織化学により、グリア細胞と炎症免疫機序がレビー小体の変性に関与することを明らかにした。DLBにおけるα-シヌクレインとリン酸化タウの相互作用は重要であり、軸索を含めた神経細胞内での両者の共存過程を検討し、その関連を明らかにした。また、神経細胞以外のグリア細胞へのリン酸化タウの蓄積の拡がりを検討し、DLBでは異なるタイプの細胞骨格蛋白異常がリンクする可能性を示した。多数剖検例を用いた臨床病理学的検討としては、大脳内のレビー病理変化は扁桃核、辺縁系皮質、新皮質へと進展して、stage I -IVに分けられ、アルツハイマー病理変化と脳幹病変を加味して、複数の亜型に分類できることを示した。これらの亜型は臨床所見とも特有の対応を示した。 前頭側頭型痴呆(FTD)については、ピック病(PiD)にはリン酸化タウの蓄積するタイプと、ユビキチンとのみ反応するタイプとがあることを示した。また新しいタウ遺伝子変異をもつFTDP-17や皮質基底核変性症(CBD)と進行性核上性麻痺(PSP)の共存例を報告した。
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