予備的な研究として、antisense oligoを含むgelの作用時間を検討した。Methamphetamineによって発現が誘導されることが確立しているc-fos遺伝子のantisense oligoとmissense oligoおよびsalineを含むgelを用意した。それぞれをラットの線条体の片側に1μl注入し、24時間後にmethamphetamine 6 mg/kgを腹腔内投与した。投与3時間後に脳を灌流固定しFosタンパクの発現をimmunohistochemistryで検討した。その結果、antisense oligo投与によって少なくとも24時間後の時点では、Fosタンパクの出現がsalineあるいはmissense oligoと比較して抑制されており、antisenseの活性が持続していることが分かった。また、gelを脳内投与したラットを用いて、片側黒質線条体機能の障害による回転運動をmethamphetamine 2 mg/kgの腹腔内投与によって検討した。Gel投与後の、1日目および3日目に回転運動を観察したが、いずれの時点でも回転運動は生じなかった。このことは、Fosタンパクの発現とその機能に解離が見られることを意味するのかもしれない。しかし、gel封入法は少なくともc-fos遺伝子のantisense strategyには有効であることが確認された。現在は、BDNFやReelinなど神経発達に関連する遺伝子のantisense oligoを設計し、実際にタンパクが抑制されるかを検討している。
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