研究課題/領域番号 |
12670956
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大野 裕 慶應義塾大学, 保健管理センター, 教授 (70138098)
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研究分担者 |
安藤 寿康 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30193105)
平野 雅己 山梨大学, 医学部・精神神経医学・臨床倫理学講座, 講師 (80228808)
神庭 重信 山梨大学, 医学部・精神神経医学・臨床倫理学講座, 教授 (50195187)
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キーワード | 双生児 / 食行動 / やせ願望 / 遺伝 / 環境 / 体型不満 / 過食 / 発達段階 |
研究概要 |
<問題と目的>本研究では双生児サンプルを用いて、「やせ願望」、「体型不満」、「過食」など食行動不適応と呼ばれる状態について検討を行った。これまで摂食障害に関する研究は親子関係の観点から論じられることが多かったが、その結果は様々である。今年度は、個人の遺伝的素質を考慮に入れた上で食行動不適応に環境が及ぼしうる影響と、発達による遺伝と環境の寄与の変化について研究した。 <方法>研究は慶應義塾双生児研究プロジェクトに参加した女性の双生児を対象に行われた。参加者数は一卵性双生児170組、二卵性双生児54粗であり、測度はEating Disorder Inventory(Garner&Olmsted,1984)の「やせ願望」、「過食」、「体型不満」を用いた。 <結果および考察>「過食」、「体型不満」では一卵性双生児のペアの相関係数が二卵性を上回り、ともに「相加的遺伝+非共有環境」のモデルが採択された。遺伝からの説明率はそれぞれ30%、52%であった。これに対して、「やせ願望」では「共有環境+非共有環境」のモデルが採択され、個人の持つ遺伝的素質よりも、人を取り巻く環境要因から受ける影響のほうが大きいことが示唆された。また、本研究ではこの双生児サンプルを17歳以下と18歳以上の2つの群に分けて分析を行ったところ、「体型不満」、「過食」においては17歳以下の群では「共有環境」がより影響していたのに対し、18歳以上になると「遺伝」の影響のほうがより強くなった。このことは発達するに従ってより個人の遺伝的な素質が「体型不満」や「過食」に対して及ぼすようになってくるということを示している。これは、食行動不適応は発達段階に従って個人の要因がより現れやすくなることを示す所見であり、今後の予防・治療戦略に意味を持つものである。
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