研究概要 |
アミロイド斑がアルツハイマー病の原因であるかどうか現時点では不明だが,アミロイドβペプチドをワクチンとしてPDAPPマウスに投与すると,アミロイド斑の沈着が顕著に減少したとの報告がなされた。そこで病的老化であるアルツハイマー病のモデル動物としてニーマンピック病C型(NPC)マウスおよびダウン症(Dn)のマウスを用いてアミロイドβペプチドを投与し,投与前と後の脳組織を用いて,その治療効果の判定を検討することを研究目的とした。先ずNPCマウスのC57K-sJ(spm)とNIHモデルの神経病理学的比較を検討した。spmもNIHモデルも基底核,視床などの神経細胞の変化が初期から顕著である点は類似し,かつ脳幹部や小脳の変化には両者に差がないが,寿命に関してはNIHモデルの方がspmより短命であった。なお大脳皮質の変化はspmの方が早期から認められる結果を得た。spmに対して,ワクチン投与を出生後2w目から死亡まで行った。その結果,寿命の延命には無効であった。脳の病理所見上,神経細胞の変化に差はなかった。しかし,無治療spmに比べて,ワクチン投与spmではアストログリアの反応が少な目であり,間接的な影響がある可能性が示唆された。なおこのspmも13週齢で死亡する為,より長期の効果判定の為にDnマウスに対してワクチン投与を行った。この結果,大脳皮質,海馬の神経細胞の萎縮は4ヵ月齢(ワクチン投与後7週)から,10カ月齢(ワクチン投与後8カ月)長期生存マウスの間で進行性であった。また長期生存マウスで淡蒼球の石灰化も出現し,Basalforeb-rainにはグリオーシスが出現した。4カ月齢では投与/非投与マウスの所見に差はなかった。一方,大脳皮質下白質のグリオーシスはGFAPの免疫染色では長期生存Dnマウスで軽度になっていた。
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