研究概要 |
本研究では、ヒト神経芽細胞腫SY5Y細胞を用い、グルココルチコイド(GC)や熱ショック転写因子(HSF)によるヒトβ_1アドレナリン受容体(AR)遺伝子発現調節機構解明を目的とした。翻訳開始点から5'上流269/-365のCATT box逆配列(ATTGG)に結合するNF-Yと-345/-337あるいは-332/-324に結合するAP-2とが協調的に作用しヒトβ_1AR遺伝子基礎転写活性を調節する。さらにAキナーゼ活性に伴うβ_1AR遺伝子転写促進にはNF-Yと-353/-346に結合するCREBが協調的に作用する。いずれの場合でもATTGG配列に変異を導入すると転写括性は著しく低下することから、NF-Yはβ_1AR遺伝子転写調節に必須の転写因子である。NF-Yは3量体として存在し、NF-YA,-YB, YCサブユニットから構成される。ウエスタンブロット解析によりNF-YA,-YB, -YCサブユニットの存在を確認した。抗NF-YA,-YB抗体存在下のゲルシフトアッセイではスーパーシフトが認められたが、抗NF-YC抗体では認められなかった。このことから、NF-YC抗休が認識するエピトープ部位にAP-2あるいはCREBが結合している可能性が示唆された。CREB結合配列とNF-Y結合配列との距離は11bp、2箇所のAP-2結合部位との距離はそれぞれ19bp、32bpであることから、NF-YとCREB、AP-2はいずれもDNAの同側に結合しNF-Y-CREBあるいはNF-Y-AP-2複合体を生じたものと考えられる。一方、タンパク質-タンパク質相互作用により、活性化されたGC受容体がNF-Yと結合し、NF-Yを補足することによりβ_1AR遺伝子発現を抑制する可能性が示唆された。
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