研究概要 |
外科的治療を考慮した難治性側頭葉てんかん患者のうち,説明の後同意が得られた9例を対象に脳血管内脳波記録を行い,てんかん原性焦点の側方性(Iaterality)に関する有用性について検討した。脳血管内脳波は脳血管撮影およびWadaテストを行う際に,超選択的に両側の側頭葉下面に挿入したguide wireもしくは4電極のMicro-sized mapping catheterを電極とした。脳血管内脳波で得られた突発波の側方性とてんかん原性焦点の側方性の一致は9例中7例(78%)で,残り2例は両側性であったが,てんかん原性焦点側有意に突発波を認めた。突発波の検出は,同時に記録した蝶形骨電極と比較しても明らかに高感度であった。 脳血管内脳波は頭蓋内脳深部の電気活動が記録できる貴重な検査法であると考えられた。当然のことながら,この脳血管内脳波の結果のみで手術側を決定できるというものではなく,あくまでも補助的検査であるが,脳血管内脳波は術前に必ず行わなければならないWadaテストと脳血管撮影を行う際に,比較的侵襲が少なく簡便に行え,本来であれば定位的に穿刺するか,バーホールもしくは開頭して電極を留置しなければ得られない脳深部構造の電気的活動を記録することが可能である。 脳血管内脳波は非侵襲的検査でてんかん原性焦点側に矛盾がなく,侵襲的な慢性頭蓋内脳波記録がスキップ可能な症例では,この脳血管内電極脳波記録が唯一の頭蓋内脳深部からの情報であり,他の非侵襲的検査と側方性が一致すれば側方性の信頼度が更に高くなる。逆に,非侵襲的検査で側方性に矛盾が認められ慢性頭蓋内脳波記録を行わなければならない症例では,脳血管内電極脳波から得られた情報は硬膜下電極を多く留置する側方の決定に有用であると考えられた。
|