先年、Bernard-Soulier症候群(BSS)患者2家系において見いだした新規の遺伝子異常が、BSS発症の原因となることを発現実験をとおして証明した。具体的には、GPIb/IX複合体を構成する3種類の遺伝子を発現プラスミドに組み込み、3種類の発現プラスミドを作成した。これに遺伝子変異を導入し、GPIb/IX複合体の発現量の変化を野生型と比較した。その結果、FACSおよび免疫染色で変異群において膜表面GPIb/IX複合体の発現量が著しく低下していることが確認された。 上記で作成した組み替えプラスミドをもちいてGPIb/IX複合体蛋白の構造-機能相関解明のための解析を施行中である。具体的には、GPIb/IX複合体に存在するleucine rich repeat(LRR)構造に着目し、GP構成蛋白の一つであるGPIbβ遺伝子のLRR構造をコードする部に変異を導入し、その結果もたらされる膜表面GPIb/IX複合体発現量の変化をFACSおよび免疫染色により解析した。GPIbβ LRR構造内のロイシン残基の変異はGPIb/IX複合体の発現量を低下させることが判明しており、この構造がGPIb/IX複合体形成過程に密接に関与する構造であることが判明した。さらに、血小板表面上の他の糖蛋白質(GP)の影響にとらわれない純粋な系でのGPIb/IX-フォンヴィレブランド因子(vWF)との反応の解析を可能にするため、上記で作成した組み替えプラスミドを利用しstable cell lineの確立に取り組んでいる。現時点ですでに何種類かのstable cell lineの作成を終えているが、これらのcell lineは培養を続けるとレセプターの発現量が極端に低くなることが認められており、尚しばらくの検討が必要と考える。
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