研究概要 |
本研究では造血幹細胞から巨核球造血を選択的に増幅し、in vitroで効率よく血小板を産生させる培養系の開発を計画し、培養血小板の血小板輸血への応用を検討した。 早期造血幹細胞(CD34-/c-Kid+/Sca-1+/Lin-)をFACS vantageにより精製,分離し、マウスstromal cell line(HESS-5)上で、SCF(10ng/ml) + IL-3(100ng/ml) + murine thrombopoietin(20ng/ml) + IL-6(100ng/ml) + sIL-6r(100ng/ml)の存在下で7日間液体培養し、巨核球を誘導した。早期造血幹細胞100個あたり約6000個の巨核球が誘導可能であり、通常の5倍の巨核球が誘導された。培養上清を回収し、sucrose density gradient centrifugationにより血小板分画を回収後、lineage抗体(B220,Gr-1,Mac-1.Thy-1,TER119抗体を混合したもの)を標識したmagnetic beadsにより血小板以外の細胞あるいは細胞の破片を除去した。早期造血幹細胞100個から回収された培養上清からは4-5x10^5個の血小板が回収された。培養血小板のトロンビン凝集能は正常血小板の50%と低値であったが、マウスに5x10^9/mlの血小板浮遊液1mlを輸注した結果、血小板類の増加(期待値の15%)、出血時間の短縮を認めた。 本研究で得られた結果は1)巨核球造血の選択的培養には早期造血幹細胞(CD34-/c-Kid+/Sca-1+/Lin-)が必要である。2)巨核球造血の選択的誘導にはSCF+IL-3+Tpo+IL-6+sIL-6rが最適である。3)培養血小板はin vivo投与で出血時間の短縮を認めた。 培養血小板は、in vivo投与でも止血効果を有する。 本研究は造血幹細胞から血小板を誘導する研究の基礎的データーに成りうると考えられ、今後、大量培養系を確立し、臨床応用への可能性が開かれたと考えられる。
|