研究課題/領域番号 |
12670974
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 誠司 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (60292900)
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研究分担者 |
黒川 峰夫 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (80312320)
青木 克己 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (40291322)
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キーワード | t(1;7)転座 / 骨髄異形成症候群 / 切断点 / アルフォイド配列 / セントロメア / FISH / 1番染色体 / 7番染色体 |
研究概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)の病態解明を目的として、MDSにしばしば認められる不均衡型転座であるt(1;7)(p10;q10)の解析を行った。本転座を有する患者検体について、1番、7番各染色体セントロメア近傍にマップされるゲノムクローンをプローブとしてFISHを行い、派生染色体上における当該プローブのシグナルの有無に基づいて、転座における1番、7番両染色体上の切断点の同定を行った。t(1;7)転座においては残存する派生染色体上の1番および7番染色体セントロメアプローブ(D1Z7およびD7Z1)のシグナルの減弱をみとめること、さらにD1Z7、D7Z1を用いたFiber FISHにおいて両者のシグナルが同一のDNA fiber上で連続して観察されることより、本転座はをD1Z7、D7Z1の二つのアルフォイド配列間で生じていることが明らかとなった。また、CCDカメラを用いたそれぞれのプローブのFISHシグナルの定量結果より、各アルフォイド内における転座切断点の位置は症例により大きく異なることが推定され、本転座による腫瘍化の機序としては、転座切断点近傍の遺伝子の構造異常よりも不均衡転座による染色体の量的変化、すなわち7q-ないし1q+が重要である可能性が示唆された。さらにFISHによる各染色体の多型シグナルの解析より、本転座で残存する二本の正常一番染色体および7番染色体短腕部分は互いに異なるアレルに属することから、本転座の生ずるメカニズムとしては、DNA複製後に1番および7番の一組の娘染色体のD1Z7とD7Z1間で相同組み換えが起こり、これが正常の染色体分配機構により娘細胞に分配されるモデルが想定された。これらの解析の結果より、臨床的には二色のD1Z7およびD7Z1を用いた間期各FISH法で本転座を正確に診断することが可能となり、本転座を有するMDSの診断、治療効果判定への応用が期待される。
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