CD45抗原の有無による骨髄腫細胞株のIL-6反応性増殖機構の検討を行ったところ、STAT3とMAPK(ERK1/2)は、CD45^-およびCD45^+U266両細胞で同程度に活性化されていた。ILKM2(CD45^+でIL-6に反応して増殖する)やNOP2(CD45^-でIL-6とは無関係に増殖する)など他の細胞株でも同様にIL-6に反応してSTAT3とERK1/2の活性化が認められた。この結果から、IL-6刺激によって活性化されるSTAT3とERK1/2だけでは骨髄腫細胞のIL-6反応性増殖には不充分であることが明らかになった。 次に、CD45PTPの基質であるsrc型PTKの活性化、並びにその下流刺激伝達因子の活性化の程度をCD45^-およびCD45^+両細胞間で比較したところ、CD45を発現する細胞株(CD45^+U266とILKM2)でのみsrc型PTK、LynまたはFynの活性が上昇していた。さらに、CD45^+U266で活性化されているLynの下流刺激伝達分子として、PLC-γを介したCaイオンの細胞内増加とPKCの活性化が示唆された。よって、骨髄腫細胞株では、CD45発現の有無により、細胞内src型PTKの活性化、並びにその下流刺激伝達因子の活性化の程度が異なっていると思われた。 続いて、Lynに特異的なアンチセンス・オリゴヌクレオチドまたはsrc型PTK選択的阻害剤PP2を細胞に投与したところ、CD45^+U266のIL-6反応性増殖は顕著に抑制された。この時、STAT3とERK1/2の活性には変化がなかったことから、CD45^+骨髄腫細胞で見られるsrc型PTKの活性化はIL-6刺激で活性化されるSTAT3とERK1/2とは独立したものと考えられた。従って、CD45^+U266がIL-6に反応して増殖するためにはLynの活性が必須であることが示された。
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