研究概要 |
殺菌に必須な活性酸素を産生する食細胞NADPHオキシダーゼの主要な構成要素であるフラボチトクロムb558大鎖gp91^<phox>の遺伝子CYBBは性染色体にコードされている.その発現は,これを本来発現している細胞(好中球,単球・マクロファージ,好酸球,Bリンパ球)において一部は異なった転写因子が担っていることが解ってきた. 好中球・単球/マクロファージ・Bリンパ球では,PU.1が必須であり,好酸球ではGATA-1がこれを補っていることが,患者の解析と,新たな培養細胞系AML1で明らかとなった.プロモーター変異(-53C→T)でPU.1が結合できなくなった慢性肉芽腫症患者マクロファージにアデノベクターを用いてGATA-1遺伝子を導入したところ,オキシダーゼ活性が出現したが,これはGATA-1遺伝子に特異的ではなかった.すなわち,非特異的刺激(ウイルス感染)でCYBBがPU.1やGATA-1以外の転写因子を介して活性化されることが解った.このような転写因子の1候補として,STAT/IRFが同定され,それらの結合部位を明らかにすることができた.また,転写調節の解析系を新たに開発し,単球系における外来性GATA-1の有効性は確実なので,プロモーター異常の上記慢性肉芽腫症の遺伝子治療の方法としては,依然としてGATA-1遺伝子は有望である.ただし,PU.1とGATA-1の共発現系では,両者がお互いに阻害しあって,予想されたよりも低い活性しか得られない.したがって,遺伝子導入においては,その適性発現量を確定することが必須となる。
|