二次造血に必須の転写因子AML1は白血病の染色体転座の頻度が高い。我々はAML1が染色体転座のみならず点突然変異によっても白血病発症に関与することを報告した。本研究ではAML1遺伝子異常と白血病発症、進展、再発との関係を検討した。全国より急性骨髄性白血病(AML)の一病型であるMO症例の検体を集積した。その結果、MO病型でAML1遺伝子異常は多く、25例中5例に新たに異常例を見つけた。AML MO病型は種々の染色体異常を有する例が多く、AML1遺伝子のハプロ接合体の喪失は白血病の病初期に関与し、発症のための二次的な異常を来しやすくする可能性が示唆された。この間、米国ボストンのグループより高率にAMLを併発する家族性の血小板異常症においてAML1遺伝子のハプロ接合体異常がその原因であることが報告された。我々も自験2家系の家族性血小板異常症を解析し、AML1遺伝子の点突然変異を見出した。さらに、異常AML1遺伝子の機能解析を行い、ドミナントに正常AML1機能を抑制するミスセンス変異例ほどAML発症頻度が高いことを見出した。これらの結果から、点突然変異によるAML1遺伝子の異常はそれのみでは白血病を来さないが、遺伝子異常によるAML1活性の低下は二次的遺伝子異常を来しやすくして白血病発症に関与することが示唆された。二次的遺伝子異常としてAMLにおける異常の頻度が高いとされる細胞周期関連遺伝子p15の異常の関与について検討中である。我々はまた、急性リンパ性白血病においてもp15遺伝子は欠失あるいはメチル化による異常の頻度が高く、予後と相関することを見出した。現在、AML症例におけるp15 mRNA発現をreal time RT-PCR法で解析中である。また、骨髄異形成症候群からAMLへの進展例やAMLの再発例においてもAML1遺伝子異常が関与している可能性が高く、検討中である。
|