本研究により、白血病をよく発生するために前白血病状態として注目されている発作性夜間血色素尿症(PNH)において、血液細胞に後天性の遺伝子変異が極めて高率に発生することが判明した。方法としてHPRT遺伝子変異を検出する指標としての6TG耐性、クローン毎に形成されるコロニー培養法を併用し、HPRT遺伝子変異を有するT細胞クローンの検出および発生割合の算出法をまず確立した。6TG非存在下のコロニー形成は良好で、6TG耐性クローンの出現も健常人例では10^6に1個と従来の報告と一致し、またHPRT変異も確認できた。この方法を用いて、PNH患者群では健常人群に比べてT細胞のHPRT遺伝子変異が高率に発生していた。その頻度は遺伝子不安定性の陽性指標となるAT患者の場合よりも顕著に高く、また骨髄細胞の解析でもPNHにおけるHPRT高変異が示された。遺伝子解析では、PNHに塩基欠損が多く健常人では一塩基置換のみで、また変異好発部位は見つからなかった。なお、6TG耐性T細胞コロニーのCD59発現は正常で、HPRT変異はPNHクローンに発生したのではないと考えられた。このようにPNHではPIG-A遺伝子に加えHPRT遺伝子にも変異が発生し、しかも変異は別個のクローンに生じていた。今後、この変異好発機序を明らかにすることにより、PNHの病因、PNHクローンの拡大機序、さらに白血病の易発生の機序などに迫れると期待される。
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