発作性夜間血色素尿症(PNH)は造血幹細胞の後天性変異に起因し、溶血や造血不全に加え白血病を高率に発生し「造血細胞に遺伝子変異が発生しやすい」ことを我々は提唱している。そこで高感度の変異率測定法が確立されているHypoxanthine-guanine phosphoribosyl transferase (HPRT)遺伝子を用いて好変異環境を実証すると共にその原因解明を試みた。結果、6チオグアニン(6TG)耐性を指標にしたHPRT遺伝子変異Tリンパ球の検出率はPNH患者で8人/12人(67%)、健常人で3/17(18%)であった。変異コロニー数は10^7コロニーあたり各々40〜367(平均149)と1〜16(平均7)であった。変異の易発生で有名なataxia telangiectasia患者は43であった。つまり、PNH患者ではHPRT変異が発生しやすいことが判明した骨髄細胞コロニー解析もこれを支持していた。罹病期間や治療内容との相関はなかった。HPRT cDNA解析は6TG耐性を支持し、変異はそのほぼ全領域にみられ集中部はなく塩基欠損が多く健常人にみられた1塩基置換とは異なっていた。これらの特徴はPNH患者のPIG-A遺伝子変異とも似ており、PNH特有の変異原が存在すると思われた。なお、HPRT変異細胞はCD59陽性でPIG-A変異はなく、変異発生は特定の細胞に集中していなかった。また造血不全や白血病化を共有する再生不良性貧血でも好変異を示し、変異発生機序の追究の方向性が得られた。これらの前白血病状態の特徴付は白血病発生機構の解明に寄与すると思われる。
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