研究概要 |
多発性骨髄腫(MM)107例,形質細胞性白血病4例,形質細胞腫2例の計113例を対象に,IGH遺伝子の染色体転座を解析した.(対象と方法)男性58/女性55例.M蛋白は,IgGκ52例,IgGλ26例,BJκ12例,BJλ10例,IgAκ8例,IgAλ5例.腫瘍細胞の比率は12〜100%.骨髄液,末梢血,胸水を型のごとく固定し,double-color FISH(DC-FISH)を施行した.IgH.転座の陽性例では,PRAD1,c-MYC,FGFR3,MUM1(IRF4),BCL2遺伝子との融合を検討した.(結果)評価が可能であった105例中69例(66%)にIgH遺伝子のスプリットを認めた.t(11;14)をPRAD1/IgHの融合として検出し,評価が可能であった38例のうち27例(71%)で陽性であった.t(8;14)はc-MYC/IgHの融合として検出し35例中11例(31%)が,t(4;14)はFGFR3/IgH融合として検出し48例中8例(17%)が,t(6;14)はMUM1/IgH融合として検出し38例中8例(21%)が陽性であった.PRAD1,c-MYC,FGFR3の全てについて転座相手を検討できた43症例のうち9例(21%)で,2種類のIGH転座を認めた.FGFR3/IgH陽性例8例中7例では,RT-PCRでFGFR3の過剰発現を認めた.FGFR3転座例では骨病変を示す症例が有意に多かった.(考察)MMの66%にIgH転座を認め,t(11;14)とt(8;14)の頻度が高頻度であった.同一症例で2種類の転座相手の見出される場合があり,IgH遺伝子座の不安定性がMMの病因に密接に関与していると考えられる.
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