研究概要 |
多発性骨髄腫(MM)105例中69例(66%)に免疫グロブリンH(IGH)鎖遺伝子の染色体転座を認めた.PRAD1-IGH再構成は,38例の評価可能症例のうち27例(71%)が陽性であった.c-MYC-IGHの融合は,35例中11例(31%)に,FGFR3-IGHは48例中8例(17%)に,MUM1-IGHは38例中8例(21%)に検出した.PRAD1,c-MYC, FGFR3の全ての遺伝子について検討できた43症例のうち9例(21%)で,double IGH転座を認めた.臨床的には,PARD1-IGH再構成は形質細胞性白血病に認められ,FGFR3-IGH再構成は骨病変の頻度が高かった. 次に,IGH転座のおきたBリンパ球の分化段階を検討した.骨髄または末梢血より単核細胞を分離し,preB細胞(CD38+,CD19-),幼弱骨髄腫細胞(CD38+,CD19-,MPC-),成熟骨髄腫、細胞(CD38+,CD19-,MPC+)をsortingし,DC-FISH法を施行した.17症例のMMを検討した.FGFR3を転座相手とした場合では,幼弱骨髄腫、細胞にのみ転座が認められた症例と,逆に成熟細胞にのみ転座が認められた症例,幼弱と成熟いずれの、細胞群にも転座が認められた症例とが存在した.一方,CCND1を転座相手とする症例では,すべて幼弱と成熟いずれの細胞群にも転座が認められるパターンであった.[結論]FGFR3/IGH転座はBリンパ球の分化成熟段階の早期と後期にも関与するが,CCND1/IGH転座は骨髄腫発生の早期変化と考えられる.
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