ヒト第VIII因子を搭載するベクター構築に先立ち標的組織に対するAAVベクター投与法の基礎実験として、至適プロモーター及び血清型の検討を行った。肝臓に対しては`CMV、CAG、PGK、EF-1α等のプロモーターを用い、マウス由来のエリスロポエチン(Epo) cDNAを搭載した2型AAVベクターを構築・作製した。以上をマウスに経門脈的に投与し、血清エリスロポエチン濃度及び血液学的指標を用いて遺伝子発現効率を系時的に比較した。その結果、CAG、CMV、PGK、EF-1αの順に強い発現が得られた。次にCAGプロモーターでマウスEpoを発現するユニットを用いてAAVセクレチン遺伝子をβ-galactosidaseおよびNeomicine耐性遺伝子と置換したコンストラクトおよびSCRC遺伝子のエクソン1を同様に置換したコンストラクトを作製し、各遺伝子のノックアウトマウスを作製した。SCRC遺伝子はホモのノックアウトマウスで、RT-PCRにて、遺伝子が発現していないことを確認した。今後病理学的、生化学的解析および行動解析を行う計画である。また、セクレチン遺伝子のノックアウトマウスも出生し、今後系統を確立していく。の1型から5型までの血清型の違いによる遺伝子発現を比較検討した。その結果、5型を用いた場合に最も高い発現が見られた。骨格筋に対しては実績のあるCMVプロモーターを使用し骨格筋内への注入による血清型の比較を行ったところ、1型が最も高く、5型がこれに次ぎ、それ以外が2型とほぼ同程度とする結果が得られた。以上の結果は長期にわたる観察によっても同じ傾向を示した。以上の成果に基づきヒト凝固第VIII因子遺伝子を搭載したAAVベクターの構築を行った。第VIII因子遺伝子を重鎖と軽鎖の二つのベクターに分けて標的細胞に共感染させることで第VIII因子活性の発現を目指している。肝臓に対してはCAGプロモーターと5型キャプシドを、骨格筋に対してはCMVプロモーターと1型キャプシドを各々用いて作製した。in vitroの実験系で培養上清における第VIII因子活性が確認出来たため、in vivoで検討を行うべくベクターの大量調整を行った。凝固第VIII因子ノックアウトマウスも既に入手済みであり、現在注入に向けた準備を行っている。今後は注入と共に経過観察、治療効果の確認を行い、有効であれば更に大型の動物における治療実験を指向する予定である。
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