研究概要 |
1 CD34陰性造血幹細胞純化法の検討 筆者らは赤血球除去フィルターを利用してヒト臍帯血よりlineageマーカー陰性CD34陰性細胞を100倍濃縮することに成功した。さらに免疫磁気ビーズ法、FACSを組み合わせるとにより99%以上の純度でこれらの細胞を回収することが可能であった。 2 CD34陰性造血幹細胞populationに関する検討 2-1 造血器腫瘍におけるCD34陰性造血幹細胞動態の解析 分離されたCD34陰性造血幹細胞を対象に慢性骨髄性白血病検体ではbcr/ab1、急性骨髄性白血病ではAML/ETO、などの疾患特異的存プローブを用いたin situ hybridizationを行う。骨髄異形性症候群では各症例で染色体検査を行い、染色体異常の検出された症例につき染色体特異的プローブを用いてin situ hybridizationを行った。骨髄異形性症候群10例、慢性骨髄性白血病ユ0例で検討し、トリソミー8の1症例でCD34陰性造血幹細胞に染色体異常を認めなかった。 2-2移植後CD34陰性造血幹細胞動態の解析 [目的]CD34陰性造血幹細胞の造血再構築における意義を明らかにするためにCD34陽性造血幹細胞移植患者の移植後患者骨髄を用いてCD34陰性造血幹細胞の動態を解析した。[方法]解析対象は4人のCD34陽性造血幹細胞移植患者(A群:移植後22-84ケ月後)、1人のT細胞除去骨髄移植患者(移植後52ケ月後)、6人の通常の骨髄移植患者(移植後17-113ヶ月後)、6人の健常人。Lin-CD34-細胞をマウス骨髄ストローマ細胞株HESS-5とともにヒトサイトカイン存在下に培養した。[結果]骨髄単核球中のLin-CD34-細胞の存在頻度はA群で0.96±1.01%(n=4)、それ以外の移植患者(B群)で0.66±0.59%(n=7)、健常人(C群)で0.45±0.16%(n=6)であった。培養7日後のCD34発現はA群由来の細胞では認めなかったが、B群およびC群のLin-CD34-細胞ではそれぞれ21.8±13.8%(n=7)、39,0±19.9%(n=6)であった。コロニー形成は、培養7日後ではA群で0/1000、B群で13,17±3.19/1000(n=7)、C群で24,80±12.87%/1000(n=6)とCD34発現誘導率との相関を認めた。[考察・結論]CD34陽性造血幹細胞移植患者群の骨髄にはLin-CD34-細胞が存在するが培養後、CD34発現およびコロニー形成能を誘導できないことはこれらの細胞にCD34陰性前駆・幹細胞が存在していないことをことを示唆する。最長で7年後まで正常の造血能を維持していることからこの期問におけるCD34陰性幹細胞の関与は少ないと考えられ。
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