国内並びに海外の諸施設より依頼された遺伝性非球状性溶血性貧血症例117例につい七検索し、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)異常症16例、ピルビン酸キナーゼ(PK)異常症7例、ホスホフルクトキナーゼ異常症1例、並びにホスホグリセリンキナーゼ異常症1例を新たに発見した。分子異常の同定に関しては、日本人PK異常症5家系の解析を行い、3種の変異(664-6 ins GAC、1468T、1436A)を決定した。更に韓国人PK異常症男児の解析を行い、新規の変異である1231Aのホモ接合体であることを明らかにした。本例は韓国人症例で初めて分子異常が同定されたPK異常症である。G6PDA^-は黒人で頻度が高い変異酵素で、感染、酸化的薬剤の服用やfava beanの摂取により急性溶血発作を来す。G6PD A^-の分子異常は376 A→G(Asn26Asp)単独、ないし202 G→A(Val68Met)、680 G→T(Arg227Leu)、又は968 T→C(Leu323Por)の重複変異によることが明らかになっている。われわれは3歳の日本人男児で、Hb 9.6g/dl、網赤血球2.9%、間接ビリルビン3.9mg/dlと急性溶血発作を来したG6PD異常症症例(G6PDAsahi)を発見した。遺伝子解析の結果、G6PD Asahiの分子異常は202 G→A(Val68Met)であり、この変異単独でも急性溶血発作を来すことを明らかにした。PK異常赤血球の細胞レベルでの機能解析に関しては、シリコン単結晶基盤に微細な溝(マイクロチャネル)のアレイの作製は6μmまでが技術的に限界で、より生理的な条件である2、3ないし4μmの溝のアレイの作製が出来なかった。従って、PK異常モデルマウス赤血球とgenetic rescueしたマウス赤血球、並びにヒト正常赤血球とPK異常症患者赤血球との間で赤血球変形能の違いを見出すことは出来なかった。
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