研究概要 |
再生不良性貧血(再不貧)は汎血球減少と骨髄低形成を主徴とする疾患で、その病因としては、造血幹細胞自体の障害のほか、免疫学機序による造血幹細胞障害が考えられている。我々は、再不貧患者の一部で血清IL-18が高値であること見いだし、このことから、Th1細胞を活性化しIFN-γ誘導活性のあるIL-18が、造血障害に関わっているとの仮説をたて、IL-18が発見された系であるP.acnes+LPS処理マウスの造血能を検討することとした。 まず、IL-18の造血幹細胞への効果を検討した。リコンビナントマウスIL-18を、in vitroの造血幹細胞培養系に添加すると顆粒球・マクロファージ系コロニーを増加させるが、造血幹細胞を精製してIL-18を添加するとこの作用はなくなり、IL-18は、造血幹細胞の分化・増殖に直接的な効果を持たないと考えられた。 C57BL6(B6)マウスにP.acneseの死菌菌体を投与(1mg, ip)、1週間後にLps(1μg, iv)を投与し、コントロール(非投与)群、P.acnes群、P.acnese+LPS群の3群において、末梢血の血算、骨髄での骨髄組織像、有核細胞数、造血前駆細胞数等を比較した。P.acnes+LPS群の24時間後では、骨髄の組織像で、massive apoptosisが観察され、骨髄有核細胞の減少がみられた。造血前駆細胞(CFU-GM)のFas感受性を抗Fas抗体を加えコロニー形成が抑制される割合で検討しすると、P.acnes群で、Fas感受性が出現、P.acnes+LPS群では更に強い抑制がみられ、さらなるFas感受性亢進を示した。P.acnes+LPS投与では、大腿骨骨髄1本あたりの造血前駆細胞(CFU-GM)数が減少した。このように、P.acnes+LPS群では、骨髄のapoptosisを伴う造血抑制がみられる。 これらのことより、次のような機序を想定した。即ち、P.acnesを投与することにより、マクロファージから、IL-12が分泌され、これにより体内環境はTh1優位となる。Th1細胞からのIFN-γにより、造血幹細胞にFasが発現されるようになる。そこにLPSを投与すると、マクロファージからIL-18が分泌され、これがTh1細胞にFas ligandの発現を増強させる。そこで、Fas/FasLを介して造血幹細胞障害が障害される。このように、IL-18によりさらに活性化されたTh1細胞が免疫学的機序による造血幹細胞障害に関与していると考えられる。
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