研究課題/領域番号 |
12671018
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
尾股 健 宮城教育大学, 保健管理センター, 教授 (50194634)
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研究分担者 |
伊藤 貞嘉 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40271613)
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キーワード | チトクロムP450 / アラキドン酸 / 20-HETE / EET / アンジオテンシン / ACE阻害薬 / 高血圧 / 進行性腎疾患 |
研究概要 |
腎臓は各種の脈管作動物質の産生とそれによる水・電解質代謝調節などにより血圧調節に重要な役割を果たしている。本研究ではチトクロムP450依存性エイコサノイドの腎内産生調節と各種病態における異常の解明を目指した。チトクロムP450依存性エイコサノイドは、腎皮質・髄質外層ではプロスタグランディン系より優位にアラキドン酸から産生され、主な代謝物の20-hydroxyeicosatetraenoic acid(20-HETE)、epoxyeicosatrienoic acid(EET)は、血管収縮作用と拡張作用から、利尿作用、レニン分泌抑制作用など多彩な生理活性を有し、腎血行動態や水・電解質代謝調節に関与する。また、細胞増殖刺激作用も認められ、これらの産生は自然発症高血圧ラットで亢進している。さらに、単離輸入細動脈潅流標本ではこれらのP450依存性エイコサノイドが血管緊張の維持に関与し、EETは内因性に血管拡張作用を有している。さらに、アンジオテンシンIIや一酸化窒素の作用のメディエイターとしても作動している。すなわち、アンジオテンシンIIはタイプ2受容体を介してEET産生を刺激し、その血管拡張作用により、EETはアンジオテンシンIIの血管作用を修飾する。一方、降圧薬のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬でそれらの産生酵素の誘導がなされ産生が亢進する。その作用はアンジオテンシン受容体拮抗薬では認められず、プラジキニン拮抗薬やNO合成酵素阻害薬で抑制される。したがって、ACE阻害薬は内因性ブラジキニンやNOの産生刺激を介してチトクロムP450依存性アラキドン酸代謝産物の産生を刺激する。ACE阻害薬は進行性腎疾患・高血圧における臓器保護作用を有することが明らかにされているが、これらのエイコサノイドの産生調節がその臓器保護作用に関与している可能性がある。
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