研究概要 |
今年度は、細胞内における蛋白の動態やシグナリングの研究から、以下のような結果が得られた。 1.線虫C.elegansの遺伝子であるF40F9.9のコードする蛋白は、アクアポリン水チャネル(AQP)に特有なアミノ酸配列(2箇所のNPA配列)を有している。そこで、この蛋白がAQPであるかどうかを、アフリカツメガエル卵母細胞を用いて検討した。この蛋白を発現させた卵母細胞では、免疫細胞化学的検討から形質膜上に蛋白が発現していることが確認された。また、蛋白発現によって水透過性は10倍以上に増加していた。よってわれわれは、この蛋白をAQP-CE2(C.elegansで同定された2番目のAQPという意味)と名づけた(論文1)。 2.STAT1が細胞増殖に与える影響を培養ラットメサンジウム細胞を用いて検討した。インターフェロンγを加えた細胞では、JAK1,KAK2,STAT1が同定され、JAK-STAT系がインターフェロンγによって活性化していることが示唆された。また、thymidine取り込みや、変異STAT1を用いた一連の実験から、インターフェロンγによって活性化されたSTAT1がメサンジウム細胞の増殖を抑制することが示唆された(論文2)。 3.常染色体優性遺伝の腎性尿崩症を呈する3家系から、3種のAQP2遺伝子異常を見出した。これらの変異AQP2は、野生型AQP2と4量体を形成するものの、形質膜上への発現はほとんど認められなかった。免疫細胞化学的等の検討から、変異AQP2は細胞内蛋白輸送が障害されているため小胞体ないしはゴルジ装置にとどまることが示唆された。この結果は論文にまとめて投稿準備中である。
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