研究概要 |
平成13年度は、急性腎不全後の細胞増殖のkey factorとして、転写因子E2F1に注目した。両側腎動脈閉塞によりARFラットを作成し、E2F1などの細胞周期調整遺伝子の発現の時間経過と発現部位を検討した、またE2F1 decoy-oligonucleotide (ODN)投与下及び、E2F1-adenovirus投与下での腎機能の変化を検討した。ARFラットではE2F1の発現は12hから認められ、cyclin D1, E, Aはそれに遅れて24-48hで認められた。E2F1 decoy-ODN投与によりcyclin D1, E, Aの発現は低下し、クレアチニン、BUNの回復も遅延した。E2F1-adenovirus投与下では、E2F1は、近位尿細管に強制発現され、ARF後の腎機能の障害は、有意に軽減された。以上の結果より、ARF回復期においてE2F1が発現することで細胞周期調整遺伝子が転写活性化され、尿細管細胞の増殖、再生及び、腎機能の回復を引き起こすと考えられました。 また急性腎不全後の尿細管細胞の再生因子としてWnt4に注目した。Wnt4は、胎生期に腎に発現し、metanepric mesenchymeの分化に必須な遺伝子である、急性腎不全ラットにおいて、虚血、再灌流後6時間より、近位尿細管において発現が上昇することを報告した。またWnt4を尿細管細胞に強制発現させたところ細胞周期調整遺伝子であるcyclin D1, cyclin Aの転写活性と蛋白発現が上昇し、細胞増殖が認められた。以上のことからWnt4は急性腎不全の回復期の細胞増殖のkey factorの一つと考えられる(投稿中)、また腎細胞のapoptosisは、急性腎不全時に認められることが、報告されているが、尿細管細胞のapoptosisを制御する因子としてphosphatidylinositol 3-kinase-Aktを同定し、報告した(Terada et al. Kidney Int)。また腎細胞の細胞周期に及ぼすGlucocorticoidの影響を検討し、Glucocorticoidは細胞周期抑制遺伝子p21を介して細胞周期を抑制することを報告した(Terada et al. Kidney Int)。
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