研究概要 |
ClC-5遺伝子変異を伴う疾患の病態生理を分子レベルで理解するために、チャネルの発現局在細胞においてソーティングレベレルでの調節機序を解析することは重要な課題である。今回、細胞内小胞でH^--ATPaseと共局在することを明らかにしたClC-5チャネルの生理学的意義について、集合尿細管の間在細胞および同じ細胞特性を示す破骨細胞を用いてClC-5の細胞および細胞内局在の変化についてソーティング調節機序を含めて免疫組織学的に解析した。NH_1Clを48時間経口投与して作成した代謝性アシドーシスマウスにおいて、1)NH_1Cl負荷後、血液ガスでpH7.19、HCO_3^-15.4mEq/l,n=5(対照:pH7.33,HCO_3^-26.0mEq/l,n=4)と著明な代謝性アシドーシスを示した。2)NH_4Cl(-)群では、ClC-5は皮質集合尿細管の間在細胞に優位な局在を示し、細胞内局在は管腔側膜直下の細胞内小胞の局在部位に一致した.一方、アシドーシス群では、皮質のみならず髄質の集合尿細管にもClC-5の発現を認め、細胞内局在は管腔側膜上へ発現が増強すると共に細胞質内へもびまん性の発現パターンを示した。ClC-5の発現および細胞内でのソーティングが酸塩基平衡状態により調節され、集合尿細管での酸排泄に関与する可能性が示唆された。一方、培養破骨細胞についてClC-5類似蛋白の発現を明らかにして骨吸収調節機序について検討した。破骨細胞においてClC-5はruffled borderの直下に局在したが、カルチトニン(100nM)に反応して細胞質側へソーティングされ(20分後)、散在性に局在変化し、120分後には投与前に復した。破骨細胞の骨吸収にClC-5関連タンパクとV型H^--ATPaseの機能共役が示唆され、カルチトニンはアクチン依存性にCl^-チャネルのソーティングを変化させ骨吸収を抑制する可能性が示唆された。現在、ClC-5のナンセンス変異症例と同じ遺伝子変異を培養細胞へ形質導入してソーティング機構についてさらに詳細な検討を行っている。
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