研究概要 |
ClC-5遺伝子変異チャネルの機能障害機構をチャネル蛋白のソーティングを軸に分子生物学的に解析した。すでに遺伝子変異が同定され、機能障害についても強制発現系で確認された3症例と、新たに同定した1症例を対象とした。哺乳類培養細胞CHO-K1へ変異遺伝子の形質導入を行い、遺伝子発現→蛋白発現→ソーティングを総括的に同定するシステムを確立し、変異型を野生型と比較検討した。ClC-5チャネルの膜貫通部位、D5-D6、の細胞内ループに生じたミスセンス変異(S270R, R280P)で、発現した変異チャネル蛋白は共に最終局在部位、エンドゾーム、にソーティングされるにも拘わらず、形質膜へのトラフィッキングが障害されることが明らかとなった。一方、C末のフレームシフト変異を生じた症例については、変異チャネル蛋白の細胞内小胞から先へのソーティング異常が示唆されており、遺伝子変異部位による表現型の相違や治療手段を考える上に興味深い所見である。 また、腎臓以外の臓器に発現するClC-5チャネルの生理学的意義を明らかにし、変異型の臨床所見と関連性を検討するために行なった解析で、破骨細胞と胃酸分泌細胞に尿細管と同様なClC-5とH^+-ATPaseの共局在が明らかとなった。さらに、カルシトニンが骨吸収を抑制する作用に、破骨細胞に局在するClC-5類似チャネルとアクチンフィラメントとの相互作用を示す所見が得られた。 ClC-5チャネルと相同性が高く、同じサブファミリーに属するClC-3チャネルに対する特異的モノクロナール抗体の作成は、集合尿細管の間在細胞において両チャネルの局在がサブタイプで違うことを明らかにした。ClC-5遺伝子変異を伴う症例が必ずしも尿中への酸排泄障害を伴わない病態を考える上に、ClC-3チャネルによる機能代償の可能性を含めさらに検討が必要と考えられる。
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