研究概要 |
腎糸球体では、血管内皮細胞、メサンギウム細胞、細胞外基質が互いに連結し、一種の閉鎖領域(endocapillary area)を形成しており、生理的状態ではこの領域における細胞-細胞間、細胞-細胞外基質間の相互作用により巧みにメサンギウム細胞機能・細胞増生が制御されている。この機構の破綻が糸球体硬化病変形成に到ると考えうる。本研究の目的は糸球体硬化の成因は、血管内皮細胞によるメサンギウム細胞の機能制御が破綻した結果による、という仮説に基づき、糸球体硬化に陥るモデルを用いて、 血管内皮細胞の脱落・消失、血管構築に関与する因子の減弱あるいは増強があるか。 糸球体に血管新生・再生を誘導することにより進行性の硬化を阻止することができるか、さらに一旦硬化に陥った病変を回復することができるかどうか。 の2点を明らかにすることである。本年は抗Thy-1モノクローナル抗体1-22-3をラットに静注し、その30分後に片腎を摘出する硬化に至るモデルと、1-22-3静注後偽手術のみを行なう、治癒する腎炎モデルを用いて、血管の再構築の過程を検討した。血管の再構築の指標として血管内皮細胞のマーカーであるCD31,CD54,CD106の発現を用い蛍光抗体法、RT-PCRで検索した。また血管再構築にかかわる因子としてVEGFを指標とした。その結果、硬化に陥るモデルにおいては治癒する腎炎と比較しある時点において血管の再生が悪く、その結果硬化に至る可能性が考えられた(第33回米国腎臓学会発表)。
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