腎細胞(MDCK細胞)、腹膜中皮細胞を用い、浸透圧依存性アポトーシスについてシグナル伝達機構の解析とオスモライト添加の効果を検討した。MDCK細胞では700mOsm負荷24時間後の付着細胞の12%がTUNEL陽性を示した。caspase-3活性は負荷8時間後より有意に増加し、24時間後には300mOsmの約20倍に増加した。1mMベタイン添加により細胞死とcaspase-3活性増加は約50%抑制された。腹膜中皮細胞は700mOsm負荷により4時間後にcaspase-3、caspase-9活性化が認められ、8時間後にはTUNEL陽性細胞が認められた。高浸透圧負荷によりミトコンドリア膜電位の低下が認められ、負荷2時間後にチトクロームCのミトコンドリアからの漏出を認めたことよりチトクロームC漏出によるcaspase-9活性化→caspase-3活性化の経路が推測された。腹膜中皮細胞では500mOsmにおいて増殖抑制が認められるが、p53タンパク量が4時間後にピークに増加した。p53の標的遺伝子であるMDM2が8時間でピークを示し、p21は4時間後より増加することより増殖抑制はp21を介すると推測された。アポトーシスの誘導される700mOsmではp53は1時間以内に減少し、Bax、Bcl-2の発現量は変化しなかった。高浸透圧によるアポトーシスではミトコンドリア障害よりチトクロームCの放出がおこり、caspase familyを活性化すると推測され、チトクロームCの放出にp53、Baxは関与しないと考えられた。
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