ヒトの食塩感受性高血圧のモデル動物であるDahlの食塩感受性(Dahl-S)ラット、および正常対照の食塩非感受性(Dahl-R)ラットを用い実験を行った。正常食塩食(食塩0.3%含有)、あるいは高食塩食(同4%含有)で両ラットを1〜4週間飼育した後、チオペンタール麻酔下でその総腎機能と、腎微小循環の調節機構の特徴について検討した。 1.高食塩食は、Dahl-Sラットにおいて、血圧、腎重量、糸球体濾過値(GFR)、蛋白尿を明らかに増加させた。食餌による体重の差はなかった。Dahl-Rラットの上記パラメーターには、食餌による差はなかった。 2.高食塩食のDahl-Sラットでは、正常食群に比し単一ネフロンのGFR(SNGFR)は増加し、尿細管糸球体(TG)フィードバック反応は、明らかに減弱していた。Dahl-RラットのTGフィードバック反応には、高食塩食の影響はなかった。 3.Dahl-Sラットのヘンレ係蹄内にNO合成酵素阻害薬(nitro-L-arginine、10^<-3>M)を微小灌流すると、TGフィードバック反応は亢進した。その程度は、正常食群に比し高食塩食群で小であった。 4.高食塩食のDahl-Sラットにvasopeptidase阻害薬(BMS-186716、4mg/kg)を静注した。血圧は下降し、GFRは減少したが、SNGFRとTGフィードバックの反応性には影響はなかった。 結論:Dahl-Sラットでは、高食塩食により腎重量が増大し、単一ネフロンと総腎のGFRはともに増加する。血圧の上昇と相まって腎障害が進展して、蛋白尿は明らかに増加する。TGフィードバック反応の減弱は、輸入細動脈を含めた傍糸球体装置の機能異常を反映しており、GFRを増加させ、腎障害の進行促進に働くと考えられる。フィードバック反応減弱には、傍糸球体装置内のNO系機能不全の関与が示唆される。Dahl-Rラットの腎重量、GFR、蛋白尿、TGフィードバック反応には高食塩食の影響はみられない。
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