研究課題/領域番号 |
12671042
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 恭一 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (90294925)
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研究分担者 |
金井 英俊 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (20311839)
平方 秀樹 九州大学, 医学部附属病院, 助教授 (70181146)
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キーワード | 糸球体上皮細胞 / 糸球体硬化 / ネフローゼ症候群 / GLEPP1 / アドリアマイシン腎症 / 細胞周期 |
研究概要 |
1.ヒトの腎生検組織での検討 昨年度までに施行した腎生検組織に加え、今年度新たに追加したネフローゼ症候群患者の腎生検組織において、上皮細胞特異的蛋白GLEPP1の免疫組織染色を行い、光顕画像を用いて糸球体におけるGLEPP1蛋白発現量の定量化を行った。その結果正常対照(生体腎移植のドナー腎)と比べてネフローゼ症候群患者の糸球体ではGLEPP1蛋白の有意な発現量の低下がみられた。これをさらに原疾患別に検討したところ、特に巣状糸球体硬化症の群では他の群に比べて発現量が低下していた。これらの結果は、腎生検組織から単離した糸球体でGLEPP1 mRNAの定量を行った結果とcompatibleであり、蛋白レベル、mRNAレベルのいずれにおいてもGLEPP1発現量の低下は上皮細胞傷害を反映しているものと考えられた。 2.ラットの腎障害モデルでの検討 昨年度の実験で、ラットのアドリアマイシン(ADR)腎症にアンジオテンシンII(AII)受容体拮抗薬(ARB)を投与すると、糸球体病変の抑制などが留められたが,同時に全身血圧の低下も観察された。そこで、全身血圧の低下に伴って糸球体内血圧が低下し、病変が抑制された可能性を考慮して、レニン・アンジオテンシン系に影響を与えない複数の降圧薬を用いてARBと同等に全身血圧を低下させ(TRX群)、ARB群と比較したところ、TRX群では糸球体病変は抑制されず、ARBの効果は血圧低下によるものではなくAII受容体の抑制による直接作用であると考えられた。また、ARBの投与によって、糸球体病変や蛋白尿に加え、上皮細胞における脱分化や細胞増殖機転も抑制されたことをふまえると、AIIは上皮細胞傷害および続く糸球体硬化に重要な役割を果たしていると考えられた。
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