透析患者では、透析間に体重の5%前後の水分貯留が必須で、透析ではそれを4時間という短時間で除水しなければならない。この時、透析後体重の設定が透析の良否に大きな影響を与え、心不全を惹起したり、透析中の血圧低下、透析後の全身倦怠感などを誘発する。今回の我々の研究の目標は、透析後の適性体重(ドライウエイト)設定へのアプローチ方法とフローチャートの作成、および、その臨床的根拠の検討である。 現在、一般的にドライウエイト設定に使用されている指標としては、1)心胸郭比、2)透析中の血圧低下、3)透析後ANP、4)下大静脈径の変化などがある。我々は、最近開発された光学的な方法による非観血的連続へマトクリット測定装置クリットライン(CRIT-LINE、In-Diagnostics社製)を用い、ドライウエイト設定の様々な指標の客観的評価と個々の患者の病態変化による循環血液量の変化を、それぞれの因子を明確にして多重回帰を行う基礎的研究を積み重ねることにより、ドライウエイト設定のためのフローチャートと個々の症例での循環動態変化に対する対処方法の選択基準が作成できると考えている。 本年度は、クリットラインによる循環血液量の変化と心胸郭比、ANP、BNPの関係について検討を行なった。2つの関連施設で安定維持血液透析を受けている230名と、心臓合併症を有する当院入院中の患者30名の計260名を対象とした。現在、第1回の測定を130名で終了し、集計中であるが、合併症のない、適正体重の設定に問題の無いと思われる患者では、体重の1%の除水にて循環血液量は3%前後減少することが明かとなった。しかし、循環器合併症、電解質異常、低蛋白血症管など様々な因子がこの関係を破綻させている。現在、透析前後の体重、透析前後の総蛋白濃度、ANP、BNPの値と、循環血液量変化速度の関係についてコンピューター解析中である。
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