1.IgA1のヒンジ部位のムチン型糖鎖の不全は分子の自己凝集現象を引き起こし、マトリックスタンパク質との相互作用を強めるなど、分子にStickyな性質を付与することが明らかとなっている。 2.IgA腎症患者の血清IgA1および腎沈着性IgA1を分離し、ヒンジ部位糖ペプチドを質量分析で定量的に分析した結果、血清IgA1、沈着IgA1ともにヒンジのムチン型糖鎖に不全が認められた。 3.血清IgA1のうちジャカリンカラムに強く結合する画分は主に凝集成分からなる。 このジャカリン高親和性IgA1のヒンジ糖ペプチドをキャピラリー電気泳動で分析した結果、低親和性成分に較べ著しい糖鎖の不全が観察された。このように1〜3の結果からIgA腎症の患者の血清は糖鎖不全分子から成る凝集IgA1に富むと結論された。 4.健常者血清由来IgA1から親和性カラムを作成、このカラムを酵素で処理し糖鎖不全IgA1カラムとして血清から結合タンパク質(IgA1-BP)を分離した。 5.このIgA1-BPをプロテインAカラムにかけたところ約半量のIgA1-BPがProtein A非結合性画分として分離され、その主要血清タンパク質の量比はIgG:IgA:IgM:C3:C4=25:10:41:22:2であった。 6.この糖鎖不全IgA1とIgGとの結合の性質を調べる目的で、分子間相互作用解析装置(IAsys)を使用した。キュベットにIgA1をコートし、酵素処理により糖鎖不全IgA1固定化キュベットを作成した。健常者血清から分離したIgGをゲルに固定、化したパパインで処理しFabとFcを調製した。同一濃度のIgGフラグメントでその結合を比較した結果、この糖鎖不全IgA1へのIgGの結合はIgG分子のFc部分が関与する反応であることがわかり、抗原抗体反応によるものではないことが明らかとなった。
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