これまでに、糸球体腎炎に二次的に惹起される間質病変へのFcRnの関与を検討する目的で、抗ヒトFcRnポリクローナル抗体を作製した。本年度はこの抗体を用いて、1)培養ヒト近位尿細管上皮細胞におけるFcRnの発現と生理学的機能、2)FcRnが媒介する培養ヒト近位尿細管上皮細胞におけるIgG輸送機構について検討した。 培養ヒト近位尿細管上皮細胞におけるFcRn遺伝子・蛋白発現をRT-PCR法、抗ヒトFcRnポリクローナル抗体を用いたWestern blotting法により確認した。さらに培養ヒト近位尿細管上皮細胞におけるFcRnは、従来報告されているようにβ2-ミクログロブリンと会合し、IgGとの結合能は酸性条件下で高親和性であり、中性条件下では低親和性であった。また、抗ヒトFcRn抗体を用いた蛍光抗体法では、細胞表面と細胞内にFcRnが発現していることが確認された。transwell insertを用いてIgG輸送について検討した結果、IgGは細胞内エンドゾームでの酸性条件下でFcRnと結合し、両方向性に細胞内での分解を受けずに輸送されることが示唆された。蛍光抗体法でのFcRnとIgGの二重染色の結果から、このエンドサイトーシス機構はFcRnによって媒介されていることが確認された。これらの結果より、FcRnがヒト近位尿細管上皮細胞において、IgGの輸送に関与している可能性が示された。今後、FcRnの糸球体上皮細胞や近位尿細管上皮細胞での発現機構と免疫グロブリン刺激下での発現調節機構について検討していく予定である。
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