Na-K-2Cl共輸送体(NKCC)やNa-Cl共輸送体(NCTT)の遺伝子ファミリーの塩基配列解析をもとに数種類のprimerを設計した。正常な腎及び5/6腎摘を行った残存腎のそれぞれ皮質よりRNAを抽出し、前述のprimerとともにRNA-PCRおおこなって数種類のNKCC variantであるDNA fragmentを得た。これらのfragmentの局在をin situ PCRにより検討したところcTALからDCTにかけて存在し、特にmacula densaに強く発現している遺伝子(NKCC-MD)を同定した。急性尿路閉塞(UTO)モデルは尿細管への圧負荷モデルであり、近年我々はNKCC2や上皮性Naチャネル(ENaC)の発現が低下することを見出し報告した。これは体液貯留に対する生体防御反応とも考えられ、一方NKCC-MDは尿流停滞を反映して発現は増加し、TGFを亢進させる方向に作用する。逆にNIDDMモデルであるGoto-Kakizaki ratでは体液貯留が見られるもののNKCC-MDの発現はむしろ減弱し、糸球体は強い圧負荷に暴露されている可能性が示唆された。5/6腎摘モデルにおいてもNKCC-MDの発現低下が見られ、やはり残存ネフロンへの圧負荷が増強されている可能性が考えられた。このようにNKCC-MDはNKCC familyにあってMDでの情報伝達に極めて重要な役割を演じている可能性が考えられ、今後遺伝子の発現を調節することで糖尿病性腎症等の遺伝子治療へ道を開く可能性が考えられた。
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