研究概要 |
周波数解析(最大エントロピー法;MEMとWavelet解析)を用い17週齢高血圧自然発症ラット(SHR)と脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)をWistar Kyotoラット(WKY))対照としてαクロラロース麻酔下に腎皮質血流をレーザードプラー計で測定し以下の結果を得た。 1.尿細管糸球体フィードバック(TGF)を抑制する利尿薬フロセマイドを投与し、腎血流波形を周波数解析し(MEM)30-50mHzの超低周波数帯域(VLF)のpowerはSHR, WKYともに抑制された、このVLFはTGFの指標と判断した。 2.一酸化窒素(NO)阻害薬L-NAME低用量(0.5と1.0mg/kg,1.0ia)を腹部大動脈の腎動脈分岐部直上に留置したカテーテル(PE10)より動注し解析を行った。最大エントロピー法でWKY, SHRでは0.5mg/kg投与でVLFの増加を認めたが、続けて投与した1.0mg/kgではVLFの減弱を認めた。SHRSPではL-NAME投与前よりVLFは低下しており、L-NAME投与でVLFの増加を認めなかった。 3.腎自動調節能の一つである筋原反応と関係が指摘されているVLFより高周波数帯域(HF:50-200mHz)で検討した。HFはL-NAME投与でWKY, SHRともに変化を認めなかったが、SHRSPでのみPowerの増大を認めた。SHRSPの高血圧維持にはTGFはあまり関与せず、NOの腎自動調節への作用は減弱していた。筋原反応は亢進している可能性が示唆された。17週齢SHRSPでは有意な蛋白尿と腎糸球体硬化がWKY, SHRと比べ出現しており、腎自動調節能の異常と腎障害の出現と関係しているものと考えられた。高血圧進展時のTGF機能へのNOの作用が低下している点で従来のmicropuncture法による報告と一致していた。 4.SHRとWKYにAngiotensin II (AngII;5,15,50,100ng/kg/min,20-min infusion)を持続静注し、腎血流をWavelet法解析した、最大エントロピー法は3分間のdataが解析に必要であったが、Waveletでは5秒間隔で連続的な波形解析ができた。Ang IIはVLFの増加傾向を認めたが有意でなくWKYとSHRで差を認めなかった、LFは両群ともに腎血流減少と同様な変化を認めた。現在アンジオテンシンII受容体拮抗薬投与による検討を行っており、NOとAngIIの関係をWavelet解析により詳細な検討が可能と考えている。Wavelet解析非侵襲的連続的に腎自動調節の解析が可能であり今後無麻酔状態への応用を可能にし臨床の場への発展も考えている。
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