高血圧の成因については遺伝子解析が盛んに行われているが、高血圧症の大部分を占める本態性高血圧症の原因遺伝子についてはいまだ確定されたものはない。我々が新たに見出した遺伝子STP(Salt-tolerant protein)は、腎近位尿細管に分布し、高食塩負荷にて発現が増強することから食塩感受性の新しい指標となる可能性がある。近年、低分子量G蛋白Rhoが高血圧を含めた循環器疾患の病態に関与しているという報告が相次いでいるが、Cdc42と相互作用を持つ蛋白であるCIP4がSTPと同蛋白であることから、STPはCdc42の作用にも関与している可能性がある。本研究では、新しい遺伝子STPの機能を明らかにすることにより食塩感受性高血圧の発症のメカニズムを解明する。 (1)トランスジェニック マウスの作製:STPの機能解析のために、ラットSTP過剰発現TGマウスを作成する。これについては、現在ホモ接合体のスクリーニングを行っている。ヘテロ接合体に、外見上の異常等認められていない。 (2)STPとCdC42との相互作用の検討(Two-hybridシステム):STPが実際にCdc42と相互作用をするのかどうかを確認するため、Two-hybridシステムを用いて検討を行った。その結果、ラットSTPがCdc42と相互作用をすることが確認され、また、我々が見出したヒトSTP変異体は、Cdc42との相互作用が認められなかった。 (3)STPの標的蛋白質の同定:Cdc42がbradykinin、Na-H exchangerなどの作用発現に深く関わっていることから、これら分子とSTPとの関与を検討する。現在実験中である。 (4)変異体の検索:ヒト腎癌組織よりRNAを抽出し、RT-PCRを行い、変異の検索を行っている。現在、約30例について解析を終了したが、明らかな変異は見いだしていない。
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