研究概要 |
6頭の妊娠ヒツジによる胎仔急性低酸素モデルを作製し,低酸素胎仔(n=4)とSiam control胎仔(n=4)より脳組織サンプルを採取した.40回程度の断続的な臍帯圧迫により予定の胎仔動脈血pH6.9〜7.0に達した.低酸素負荷に加えて急性脱血による虚血低灌流負荷を行い,その48時間後に胎仔から脳組織を摘出したところ,通常のHE染色では,大脳の海馬C1領域と小脳顆粒細胞に変性などの組織変化を認めた.TUNEL染色によりアポトーシスの有無を確認したところ,組織障害部位に一致して陽性細胞が確認された.Single-strand DNAを同定するIn situ nick translationによってもアポトーシスの存在が確認された.アポトーシスの実行分子としてのカスパーゼ系,特にcaspase-3の活性化が認められた. Nitric oxide(NO)によるアポトーシスの誘導機構として,スーパーオキシドアニオンとの反応による0N00-の生成が考えられている.NO合成酵素であるnitric oxide synthetase(NOS)は,低酸素胎仔の大脳中でCa2+依存性NOSが33%の低下を示した.eNOS蛋白およびmRNAは有意に減少したが,nNOS蛋白およびmRNAは有意の増加を示した.胎仔脳中の増加したnNOSはアポトーシスにより組織傷害性に働き,さらに神経保護的な役割をもつeNOSの減少により中枢神経障害が進む可能性が示唆された.
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