研究概要 |
成長因子、とりわけinsulin-like growth factor (IGF)-I,IGF-IIは中枢神経系の発達、髄鞘化に極めて重要な役割を果たしていると考えられることより、ラット子宮内胎児発育遅延モデルを用いて出生前後のIGF-I、II、IGF結合蛋白などの成長因子の中枢神経系における発現を経時的に解析することにより子宮内発育遅延児の学童期の認知機能障害の発生におけるこれら成長因子の役割を明らかにすることを試みた。まず子宮内発育不全の中枢神経系への影響を髄鞘化を指標として評価する目的で、大脳および小脳においてastrocyteが発現するglial fibrillary acidic protein(GFAP)、oligodendrocyteの発現するmyelin basic protein(MBP),proteolipid protein(PLP)の動態を出生前後から経時的に測定した。その結果IUGRの処置をしていない対照群の大脳におけるGFAPのmRNAはP5から明瞭に発現し、P25で最大となった。MBPおよびPLPのmRNAはGFAPmRNAに少し遅れてP10から徐々に発現し、やはりP25で最大となった。このレベルは成熟ラットの約2倍の発現量であった。一方、小脳においてはGFAPのmRNAはP5から発現し、P10で最大になり、MBPとPLPのmRNAはやや遅れてP10から発現し、P15で最大になった。従って、小脳においてはこれらのグリア関連タンパク質は大脳に先駆けて発現することが明らかになり、このパターンが子宮内胎児発育不全ラットでどのように変化するかで中枢神経系への影響を評価できると考えられる。
|