研究課題/領域番号 |
12671063
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
上谷 良行 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (40168620)
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研究分担者 |
高田 哲 神戸大学, 医学部, 教授 (10216658)
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キーワード | 子宮内胎児発育遅延 / IUGR / Insulin-like growth factor / IGF-1 / myelination |
研究概要 |
IUGRが幼若脳の発達、特に髄鞘化に及ぼす影響をIGF-1の系を中心に解析することを目的とした。 初年度の髄鞘構成蛋白 MBP、PLPの遺伝子発現の検討から、胎内発育遅延の影響は生後(P)10〜15日目、大脳よりも小脳で明らかになる可能性が考えられた。正常ラットでのIGF-1、IGF-2mRNAの発達的発現パターンの解析では、IGF-1は出生〜P15まで発現が豊富であり、以降急激に減少するのに対し、IGF-2は出生時から成獣までほぼ同レベルで発現していた。IGF-1と髄鞘化との関連は深く、P15までのIUGR状態において、大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。 IUGRモデルとして、妊娠母獣を胎齢17から20まで絶食とするモデル(1)、出生後に7日間哺乳を制限するモデル(2)の二種類を検討した。体重ではモデル(1)では生後0〜9日まで、モデル(2)では生後3〜11日まで対照群との間に有意差が認められた。脳重量でもP15のモデル(1)の小脳、P10のモデル(2)の大脳、小脳で有意に小さくなっていた。 このモデル脳において、P15のMBP、PLPのmRNA発現量を検討したところ、モデル(2)ではP10の脳重量の有意差にもかかわらず対照群と差はなかった。一方、モデル(1)ではIUGR群のIGF-1mRNA発現量が小脳で対照群の2倍以上に増加し、線条体でも、1.0kbバンドは、1.5倍に増加した。これを受けて、MBP、PLPの発現量はIUGR群での対照群の20%増となった。 髄鞘化が障害されるIUGRモデルの作製を試みたところ、胎児期の低栄養によってIGF-1の発現が増加し、出生後の栄養の回復もあって、小脳、線条体での髄鞘化は対照群以上に促進される結果となった。IGF-1は髄鞘化の開始時期を修飾するものと思われ、IUGR児における神経学的発達の促進現象を分子生物学的にとらえたものと考えられた。
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