研究概要 |
新生仔の授乳を介したダイオキシンの毒性における酸化ストレスの関与を明らかにするため,昨年度の研究で作成したモデル(低レベルのダイオキシン作用をもつ1,2,3,4-TCDDを出産直後の母体ラットに単回投与)で,本年度は,新生仔ラット肝の抗酸化系酵素(AOE)であるcatalase(CAT), phospholipid hydroperoxide-glutathione peroxidase (ph-GPx), cellular-glutathione peroxidase (cell-GPx), copper-zinc superoxide dismutase (CuZn SOD), manganese superoxide dismutase (Mn SOD)のmRNAを定量した. (結果) 100μmol/kgの1,2,3,4-TCDDを投与した母体からの授乳を介した暴露により新生仔ラット肝のph-GPx, cell-GPx mRNAは日齢2で各々コントロールの68%(p<0.01), 62%(p<0.05)まで低下した.どちらのmRNAとも日齢6にはコントロールレベルまで回復し,日齢10にはコントロールにくらべ高値となった.投与後10日の母体ラットのph-GPx, cell-GPxともコントロールと有意差を認めなかった.同様に,新生仔肝のCuZn SOD mRNA, CAT mRNAは,日齢2でコントロールにくらべ有意に低下し,日齢10でわずかに増加した.Mn SOD mRNAは抑制を認めず,日齢10ではコントロールの2.1倍(p<0.05)に増加した. (考察) 授乳を介したダイオキシンの暴露をうけた新生仔ラット肝のAOEのmRNAを定量した結果,ph-GPx, cell-GPx, CuZn SOD, CAT mRNAは日齢2までの短期間のみ抑制された.ダイオキシンは新生仔の酸化ストレスの防御に関連した酵素の発現に影響していることが示唆された.
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