研究概要 |
胎児期における外来有害物質への暴露は児の発育,発達に影響を及ぼす可能性があるが暴露バイオマーカーは知られていない.そこで本年度はこれまでに確立したcompetitive RT-PCR法により,化学物質暴露に誘導されることが知られている,CYP1B1およびCYP1A1のmRNA発現を臍帯血単核球中で定量分析した.さらに種々の周産期因子、母体の喫煙などの出生前因子とCYP1B1 mRNAレベルの関連を検討し,臍帯血単核球CYP1B1 mRNAの胎児の有害物質暴露のバイオマーカーとして有用性について考察した 臍帯血,成人血ともに単核球中のCYP1B1mRNAは検出できたが,CYP1B1にくらべCYP1A1は低値であった.臍帯血でのCYP1B1 mRAN量は15.0±23.1amol/μgRNA(mean±SD),GAPDH mRNAとの比は0.0419±0.0424,個体間差は1.4logで,成人血と同レベルであった.臍帯血中のCYP1A1 mRAN量は0.0021±0.0034amol/μgRNA, GAPDH mRNAとの比は0.0000064±0.0000082でCYP1B1にくらべ10^3order低値であった.臍帯血単核球のCYP1B1 mRNAと出生体重,在胎週数,性,母体年齢,同胞数に有意な関係は認めなかった. 測定したCYP1B1,CYP1A1 mRNAと両親の妊娠中の喫煙との関係について,自己申告による妊娠中の喫煙が1日10本以上を喫煙ありとして検討した.CYP1B1,CYP1A1 mRNAのGAPDH比,出生体重について多重比較検定をおこなった.母親のみ喫煙の例はなく,両親とも喫煙ありは3名,父親のみ喫煙ありが6名,両親とも喫煙なしが15名であった.CYP1B1 mRNAレベルに両親の喫煙は有意な影響を与えなかった.CYP1A1mRNAも同様に両親の喫煙と有意な関係は認めなかった.出生体重は両親とも喫煙ありで有意に低値であった.
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