研究概要 |
(目的)新生児仮死における遅発性エネルギー代謝不全は仮死による脳障害に治療が介入できる可能性のある時期即ち"therapeutic window"が存在すると考えられている。この時期の脳のエネルギー動態や脳血流動態を知ることが本症の治療の介入や後遺症の減弱に重要と考えられる。 (対象と方法)生後24時間以内の新生仔豚を対象とした。人工呼吸器管理を行い、仮死負荷としてマンシェットを頚部に巻き圧迫を加え、さらに吸入酸素濃度を低下させ低酸素虚血負荷を行った。脳内エネルギー代謝は31P-MRS(大塚電子社製、BEM250/80,2.0 Tesla)で測定した。脳血流は末梢静脈よりインドシアニングリーン(ICG)を投与し、脳組織ICG濃度を多チャンネル近赤外分光測定装置(OMM-2000,島津製作所製)を用いて測定し、Fickの原理を応用して局所脳血流量を算出した。31P-MRSおよび脳血流量は蘇生開始24時間後まで経時的に測定した。また、脳波も連続的に測定した。 (結果および考察)1.PCr/Piは蘇生3時間後には前値の約80%に回復していた。2.蘇生後脳波が平坦化しなかったモデルでは、蘇生後脳血流量は、負荷前と比較して約2〜4倍に増加していた。3.蘇生後脳波が平坦化していたモデルでは、脳血流は蘇生後24時間後にはほとんど消失していた。しかし、このモデルには、脳血流が蘇生後3〜6時間まで負荷前と同程度保たれているものと蘇生後徐々に減少していくものに分かれた。4.脳血流の減少したモデルではPCr/Piの回復も悪かった。薬物投与による効果は時間的な制約により今回は検討できなかった。今後は薬物療法や低体温療法についても検討したいと考えている。
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