乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome : SIDS)の病因はいまだ解明されていないが、近年、うつぶせ寝による覚醒反応低下との関連が示唆されている。睡眠中のpacifierの使用により覚醒反応の閾値が低下することが知られているが、この際に交感神経系の賦活化を伴っているかどうかの検討はなされていない。pacifierの使用による交感神経系の賦活化の有無、さらにうつぶせ寝がpacifier使用時の交感神経系の賦活化に及ぼす影響を明らかにすることによりSIDSの予防対策をたてる上で重要な情報が得られるものと思われる。今回の研究ではあおむけ寝にて睡眠中の新生児において安静覚醒時およびNon-nutritive sucking(NNS)負荷時のsucking圧、心電図、胸郭呼吸波形をポリグラフモニターを用いて測定し、心拍変動のスペクトル解析を行い、suckingが自律神経賦活化に及ぼす影響について検討し、さらにあおむけ寝とうつぶせ寝でのNNSmmS負荷時のデータを比較することで睡眠時体位による影響を検討した。心拍変動のスペクトル解析はTime Series Analysls System(NCU版)によるComplex demodulation解析を用いた。 安静覚醒時と比較しNNS時ではHF powerの低下、LF/HFの増大を認めた。通常HFは副交感神経系活動を、LF/HFは交感神経系活動を表すことが知られており、今回の検討からNNS負荷により副交感神経抑制あるいは交感神経賦活化の状態が惹起されることが明らかになった。またNNS時のHF powerの低下、LF/HFの増大はあおむけ寝とうつぶせ寝で差を認めなかった。したがって、NNS時の交感神経系の賦活化に対して睡眠時体位は影響を及ぼさないものと思われたが、うつぶせ寝とSIDSの関連についてはさらなる検討が必要と思われた。
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