研究概要 |
新生児の止血機構をThrombelastogram(TEG)で明らかにした。新生児早期では正常成人と比較して、r値およびk値の短縮効果とma値の増大を観察した。出生後の経過でr値およびk値に延長し、ma値も低下した。そこで、新生児早期のTEG上の過凝固パターンを正常成人に凝固活性化物質(thrombin、ADR, epinephrineおよびrFVIIa)を添加し再現した。特にFVIIaのTEG過凝固作用について解析し、Thrombosis and haemostasisに投稿した。また、thrombinとrFVIIaのTEG過凝固状態とその抗血栓薬との関連について近々投稿予定でいる。新生児の出血時間および凝固時間は一般に正常であり、病的状態では血栓症発症のリスクが、それ以降の小児と比較しても高い。しかし、従来知られてきた新生児の止血機構の特徴である肝由来の凝固因子低下や血小板機能低下では、その病態の説明困難であった。今回我々の示した成績から、その病態に、新生児のvon WiUebrand因子(vWF)および血小板と凝固第V因子および第VIII因子が重要であることが推察された。新生児vWFとその特異的分解酵素von Willebrand因子分解酵素(vWF: CPase)の関係では、新生児期は後者の活性低下がありそのため、より止血作用の強い高分予vWFが存在することで、新生児の一次止血の正常化に関与していることが推察された。現在原著論文を投稿予定でいる。また、新生児臍帯血を用い、ずり応力下での血小板凝集を検討した。その結果、臍帯血では低ずりおよび高ずり応力血小板凝集の低下が存在することを明らかにした。その機序として血小板機能低下に加えて高ずり応力に深く関与するecto-ArPaseの存在を示唆する結果が得られた。また、本酵素が臍帯静脈血管内皮細胞に存在することを明らかにした。おそらく、胎内での血栓予防としてこのecto-ATPaseが作用していることが示唆された。現在論文執筆中である。
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