研究概要 |
【IRF-1】 ヨード負荷によりIRE-1(+/+),(+/-)NODマウスはリンパ球性甲状腺炎(LT)を発症したが、(-/-)マウスは発症しなかった。一方ヨード負荷をせずに24週飼育したマウスでは、IRF-1にかかわらず約50%のマウスがLTを発症した。またIRF-1の有無に関わらず、thyroglobulin(Tg)免疫により70%以上のマウスが実験性自己免疫性甲状腺炎(EAT)を発症した。IRF-1-/-マウスでは処置の有無に関わらず脾臓のCD8細胞が有意に減少し、また脾細胞からのインターフェロンγの分泌も減少していた。さらにIRF-1-/-マウスでは甲状腺内へのCD8+T細胞の浸潤を認めなかった。以上の結果は、ヨード負荷によるLTと自然発症LT、Tg免疫によるEATでは、同じ橋本病のモデルでありながら、病態形成の機序が異なること、さらにEATの病態形成におけるCD8+T細胞やTh1反応の役割が自然発症LTやEATでは小さいことを示唆し、これまでの橋本病におけるこれらの重要性を支持する説とは異なる新しい知見が得られ、IRF-1欠損マウスのAITDモデルとしての有用性が示された。 【PKR】 ラット培養甲状腺細胞FRTL5を二本鎖RNAで刺激すると、PKRの自己リン酸化が誘導され、PKRのtargetであるeukaryotic initiation factor 2(eIF2α)のリン酸化も誘導された。また二本鎖RNAによりiκBαがリン酸化され、TNFα同様NFκB(65)のDNAへの結合が誘導された。また二本鎖RNAによりタイプIIFN、特にIFNβ遺伝子の発現が誘導された。IFNβはSTAT1のリン酸化を誘導した。二本鎖RNAによりFRTL5細胞のIRF-1遺伝子が誘導されるが、以上より甲状腺にもPKRなどの二本鎖RNA誘導性細胞内情報伝達系が存在し、この系が甲状腺細胞の機能の調節やAITDの病態形成院関わる可能性が示唆された。以上の結果はMolecular and Cellular Endocrinology誌上で発表された。
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