目的):バセドウ病および眼球突出症の発症機序におけるクラスII主要組織適合抗原の役割を検討する目的にて甲状腺特異的にクラスII抗原を発現する動物モデルを作成し、甲状腺に対する自己免疫反応の有無を調べる。方法):サイログロブリン(Tg)プロモーター「下流にclass II transactivator遺伝子またはco-stimulatory moleculeであるB7.1遺伝子を結合した融合遺伝子をラット前核胚に導入し、トランスジェニックラットを作成し、さらに、これらを交配して両遺伝子の共発現ラットを作成した。結果)Tg promoter/CIITA transgenic ratは甲状腺にクラスII抗原が発現していることをmRNAおよび免疫組織科学的に確認された。しかし、甲状腺重量、末梢T3レベルに対象と差は無く、TSHレセプター抗体(TSAb)も検出できなかった。そこで、Tg promoter/B7.1 ransgenic ratを作成し交配によりCIITA-B7.1double transgenic ratを作成したが、やはり、 24週齢までTSHレセプター抗体の産生は認められず、末梢T3レベルも正常域に留まった。総括)クラスII抗原とTSHレセプターを共発現させた線維芽細胞の免疫にてバセドウ病様の機能亢進症を惹起させたとの下条らの系は、甲状腺にクラスII抗原を強制発現させた動物では再現されなかった。発症にはマクロファージないし何らかの免疫的機構の関与が必要と考えられた。
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