GIP(gastric inhibitory polypeptide)やGLP-1(glucagons-like peptide 1)は、糖質や脂質の経口摂取に伴い消化管から分泌されるホルモンである。これらのホルモンは、膵β細胞に作用してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進するが、他の生理作用については不明な点が多い。そこで、これらのホルモンに対する受容体欠損マウスを用いて解析を進め、平成13年度までの研究により、インスリン分泌以外に脂肪細胞に作用し糖質・脂質など栄養素の取り込みに関与していることを明らかにした。 次に、カナダ・トロント大学Drucker博士より提供を受けたGLP-1受容体欠損マウスをGIP受容体欠損マウスと交配し、インクレチン受容体のダブル欠損マウスを作製した。このマウスで糖負荷試験を施行すると、単独欠損マウスに比し耐糖能が悪化しており、これらの消化管ホルモンが糖代謝に関与していることを実証した。さらに、ダブル欠損マウスは、野生型や単独欠損マウスに比し、体長・体重が減少していた。そこで、骨の組織像を比較すると、ダブル欠損マウスでは骨粗鬆症に類似した組織所見が得られ、インクレチンが骨代謝にも作用していることを明らかにした。 このように、外界との接点に位置し、栄養素の摂取によって分泌される消化管ホルモンであるGIPとGLP1は、糖代謝・脂質代謝・骨代謝の調節因子として重要な役割をしていることを明らかにした。
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