研究概要 |
成長ホルモン分泌促進物質(GHS)は、人工ペプチドとして合成され、その後種々のアナログや非ペプチドの開発、GHS受容体(GHS-R)とその内因性リガンドのグレリンの同定へと展開した。まず下垂体細胞GH3でGHSの反応性を修飾する因子による負の転写調節の機構を検討した。TPA/Bay K8644かGHSに代わってGHS-R/luciferase(Luc)活性を抑制するが、その抑制領域であるGHS-R遺伝子上流-669〜-640bpにおいて核蛋白との特異結合を認めた。しかし結合配列から予想されるAP2とは異なった。またグルココルチコイド(GC)はGHS-R遺伝子上流-531〜-475bpにおいて負に転写制御する。この領域にも核蛋白の特異結合を認め、結合配列に負のGC応答領域を認めたがGC受容体(GR)の直接結合による調節は否定的であった。さらに転写共役因子CBPの過剰発現でもGCによる負の制御は解除されず、GCがGRとは異なる転写因子を介して、CBP非依存性にGHS-R遺伝子転写を抑制すると考えられた。次に肝細胞H4-II-Eにおいてグレリンはインスリン様作用およびインスリンによるグリコーゲン合成促進や糖新生抑制に関連する細胞内シグナル活性に拮抗するなど抗インスリン作用も見いだした。そこでヒト肝細胞HepG2でのGHS-R遺伝子転写について検討した。-1224,-669,-608GHS-R/Luc活性は漸増し、-475,-445GHS-R/Lucでもほぼ同値を維持し、GHS-R遺伝子転写に関わる領域はより近位にあると考えられた。この結果よりHepG2細胞に特異的な転写因子ないしその関連因子の関与が示唆された。一方10-100nMグレリンはGHS-R/Luc活性を明らかに変化させなかった。
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