研究概要 |
1.原発性及び続発性副甲状腺機能亢進症(pHPTとsHPT)の病態重症度や進展度には大きなheterogeneityが存在し、遺伝要因の関与が示唆される。私共はpHPT、sHPTともにCa感知受容体(CaSR)のcodon990とintoron5の遺伝子型の違いにより血中副甲状腺ホルモン(PTH)値に差があることを見い出し、遺伝要因としてCaSR遺伝子多型の関与を示唆するものであった。2.ヒト副甲状腺の初代培養系を用いた検討より、細胞外Ca濃度上昇により増殖が抑制されること、さらにCaSR作動薬の検討よりこの増殖の調節はCaSRを介していることを見い出した。3.明らかな副甲状腺腫大を認める家族性低Ca尿性高Ca血症2例のCaSR塩基配列と機能解析より、CaSRの不活性型変異(R220W, R648stop)に起因することを示した。4.sHPT群の副甲状腺では正常群に比しCaSR及びビタミンD受容体(VDR)の著明な発現低下と増殖能の指標であるKi67陽性数(KN)の増加が認められた。次にKNとCaSR及びVDRの相関を検討した結果、両者ともに有意の負相関を認めた。さらに重回帰分析を行った結果、副甲状腺増殖亢進にVDRよりCaSR発現低下がより強く関与することを見い出した。またpHPTの検討でも同様の結果が得られた以上、2、3、4の結果より、CaSRは副甲状腺細胞増殖の調節に重要な役割を担っていることが示された。5.CaSR作動薬等の検討より、細胞外Ca濃度上昇による骨芽細胞増殖促進機序にp42/44とp38 MAP kinase活性化を介する細胞内情報伝達機構が関わっていることを見い出した。一方、CaSR antisenseを導入した骨芽細胞株MC3T3-E1の検討等より、骨芽細胞に発現するCaSRは増殖のみならず機能の調節にも重要な役割を担っていることを明らかにした。
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