研究概要 |
未分化癌におけるプロテアソームの発現状況を確認するため、まず未分化癌患者甲状腺組織を、プロテアソームsubunitおよびプロテアソーム活性化因子PA28に対する抗体で免疫染色を行った結果、正常組織に比較し、両者の発現増強が確認された。とくに、分化度が低く増殖能の高いと考えられる部位に一致した強発現が確認された。これは、組織抽出液を用いたwestern,northern分析でも確認された。さらに、未分化癌培養細胞(5CO:anaplastic thyroid cancer cell line)、分化型癌培養細胞(NPA,FRO;thyroid papillary cancer)などでも、同様な結果が得られ、プロテアソーム発現が癌化および細胞増殖と強い関連があることが予測された。次に、ユビキチン関連酵素群である、E2についてラット甲状腺細胞株FRTL5よりdegenerated primerを用いてクローニングを行い、数種のクローンを得た。これと、E1 cDNAを用いてのnorthern blotにより、増殖刺激との関連を調べた結果、プロテアソーム同様、E1,E2が増殖刺激に応じて強く誘導される事実が明らかとなった。以上の結果にもとづき、我々は未分化癌細胞株5COをもちいて、プロテアソーム活性化因子PA28に対するantisense oligomer導入をおこない、プロテアソーム機能を干渉することにより癌細胞増殖が抑制できないか否かを検討中である。さらに、同細胞をもちいて、Tet on systemを樹立しようとしている。これが確立すれば、増殖関連の転写因子特異的な既知のユビキチン化に必要な酵素群(活性化酵素;E1,結合酵素;E2,ユビキチンリガーゼ:E3)を標的とした増殖制御系、すなわち、ユビキチン化を増強し、分解を促進する遺伝子をTet system下で導入できるようになり、癌細胞増殖の抑制効果をin vitroのみならずin vivoでも正確に評価できるようになると考えられる。
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